
塩は犬が生きていくために、必要不可欠なものです。
ですが、「薬(塩)」も摂り過ぎれば「毒」となります。
特に塩の場合、「体重1kgあたり4gが致死量」とされています。
ですが、ネットでは「誤飲・誤食した時は塩水で吐かせるのがいい」といった情報を見かけます。
その方法で吐けばいいですが、吐かなかった場合、「塩中毒」になり命を落とす危険性はかなり高くなってしまいます。
そのため、自宅で塩を使った処置を行うのは完全な間違いです。
この記事では、犬と塩分の関係について「適量」「塩中毒について」「塩の過剰摂取」「塩分不足」について紹介します。
犬に塩をあたえるのは「適量」ならOK

犬に塩をあたえるのは、適量であれば問題ありません。
むしろ、犬が生きていくために必須のものなので、適量を摂取する必要があります。
塩の適量は?
一般的に成犬の犬が必要とするナトリウムの量は、1kgあたり50mgだと言われています。
ナトリウムを塩になおすと、「体重1kgあたり0.127g」が適量になります。
「体重1kgあたり0.127g」と聞くと、かなり少ないことに驚きませんか?
私の家のトイプードルは6kgなので、「0.762g」が適量ということになります。
愛犬に市販の「ドッグフード」や「おやつ」をあたえている場合は、ドッグフードやおやつに適量の塩分が含まれています。
そのため、追加で塩をあたえる必要はありません。
手作りフードの場合、「体重1kgあたり0.127g」を超えないように気をつける必要があります。
塩分の摂りすぎ・不足の症状

塩は摂りすぎても不足しても、犬の体に悪影響をあたえます。
短期間に大量の塩を摂り「塩中毒」になったときの症状
一度に大量の塩を摂取した場合、「塩中毒」になってしまうことがあります。
塩中毒の症状は数十分から数時間以内に現れます。
具体的には「嘔吐」「下痢」「ふらつき」「発作」などの症状が出て、最悪の場合、命を落とします。
塩中毒になるのは、1kgの犬の場合なら「2~3g」、致死量は「4g程度」だと言われています。

上の画像は1kgの犬の致死量である4gを実際に測ってみたものです。
人間用の大きめのスプーン一杯弱ぐらいの量になりました。
私の愛犬グミは体重6kgなので、単純計算だとこの画像の6倍の量が致死量になります。
犬は頭がいいですし、塩だけだとおいしくありません。
そのため、「スプーン約6杯分(体重6kgの場合)の塩を食べてしまう」ということは起こらないかもしれません。
ですが、犬は想像を超えるいたずらをすることがあるので、食塩の保存には注意が必要です。
例えば、塩分が大量に含まれた人間用のお菓子を「袋を破って食べる」、といったことはするかもしれません。
食塩水で吐かせるは絶対にNG!
「誤飲・誤食をした場合、塩水で吐かせるのがいい」
家でできる応急処置として、このような話を聞いたことはありませんか?
ネットなどに書かれていることもあり、実践される方も多いそうですが、これはとても危険な行為です。
塩水を飲ませたらたしかに吐くのですが、吐いてくれない場合もあります。
万が一吐いてくれなかった場合、その犬は塩中毒となってしまいます。
ただでさえ「誤飲・誤食」で困っているのに、そこに塩中毒が加わると大変なことになってしまいます。
愛犬が誤飲・誤食を起こしたときは、まず、かかりつけの動物病院などに連絡し、獣医師に「どうすればいいか」聞きましょう。
自己判断やネットの情報で、処置を行わないことはとても大切です。
塩の過剰摂取に気をつける
犬の生存や活動には塩分が欠かせません。
ですが、慢性的な塩の過剰摂取には気をつける必要があります。
過剰かどうかの判断は、「ナトリウム量1.5g/400kcal」で安全性が確認されています。
※出典:NRC(全米研究評議会)のガイドライン
400kcalあたりのナトリウム量が1.5gを超えていて、その状態が慢性化している場合は、愛犬の食事を見直す必要があります。
市販の「ドッグフード」や「おやつ」を使っている場合、塩分について配慮されているため、慢性的な過剰摂取について心配する必要はありません。
ですが、「塩分が多めな手作りフード」や「人間の食べ物」を日常的にあたえている場合は注意が必要になってきます。
「ナトリウム量1.5g/400kcal」を超えている場合、「塩分をおさえた手作りフードを作る」「塩分の多い食べ物をあたえない」といった工夫をしましょう。
心臓病や腎臓病と塩分の関係
愛犬が心臓病や腎臓病にかかっている場合、塩分の調整が必要になる場合があります。
ですが、ただ塩分を減らせばいいというわけではありません。
実際にどれぐらい減らすかは、獣医師に決めてもらう必要があります。
特に初期の心臓病や腎臓病では、塩分の調整を行わないこともあります。
犬の活動には塩分が不可欠です。
愛犬が心臓病や腎臓病にかかっていても、獣医師の指示がなければ、塩分は減らさず適量あたえるようにしましょう。
塩分が不足したときの症状
塩分が不足している場合、次のような症状があらわれることがあります。
塩分が不足したときの症状
- 倦怠感
- 食欲不振
- 血液濃縮
- 筋肉痛 など
明らかにおかしいと飼い主が判断できる症状がないため、「この子、最近、元気ないな……」と思うぐらいになってしまうかもしれません。
塩分の不足が慢性化した場合、上記の「倦怠感」「食欲不振」「血液濃縮」「筋肉痛」に加え、以下の症状も現れます。
塩分が慢性的に不足したときの症状
- 下痢・嘔吐
- シュウ酸カルシウム結石ができる
- 尿の色が濃い黄色になる など
ここまでくれば、飼い主は愛犬の異常に気づくことができます。
愛犬に「塩分が慢性的に不足したときの症状」が出ている場合は、すぐに獣医師に診てもらう必要があります。
まとめ

この記事で紹介した「とても大切なこと」をここでまとめます。
とても大切なこと
- 市販のドッグフード・おやつをあげている場合、追加で塩分をあたえる必要はない
- 手作りフード・おやつをあたえる場合、塩分は「体重1kgあたり0.127g」を超えないようにすること
- 塩中毒になるのは体重1kgの場合「2~3g」、致死量は「4g程度」
- 家で「食塩水で吐かせる」処置は絶対にしてはいけない
→失敗すると塩中毒になり、命を落とすこともあるため - 過剰摂取について、「ナトリウム量1.5g/400kcal」までなら問題なし
→超えている場合は、獣医師に相談の上「塩分をおさえた手作りフードを作る」「塩分の多い食べ物をあたえない」を実践 - 心臓病や腎臓病にかかっている場合の塩分量については獣医師に相談
- 塩分の不足に注意すること
→塩分は犬の活動に必須。不足は慢性化するまで気づきにくい
愛犬に市販のドッグフードやおやつをあたえる場合、犬用に栄養成分が調整されているため、塩分について気にする必要はありません。
ですが、手作りフードやおやつをあげている場合、塩分量が適正量である「体重1kgあたり0.127g」になっているかチェックが必要です。
また、家庭で行う「吐かせる」処置として、塩を使うのは絶対にNGです。
万が一、吐かせることに失敗した場合、飲ませた塩で「塩中毒」になってしまい、命を落とすことがあります。