悲しそうに寝転ぶ犬

犬は吐きやすい動物だと言われます。

ですが、「吐く」ことには、何らかの理由があります。

空腹など一過性のものもあれば、重い病気が原因の場合もあります。

そのため、嘔吐物や吐いたときの状態をチェックすることは重要です。

この記事では、「犬が吐く理由」「嘔吐の原因と対策」「吐きやすい犬種」をまとめてご紹介します。

何を吐いたのか?

犬と嘔吐物

犬はさまざまなものを吐きます。

何を吐いたかによってわかる情報もありますし、動物病院にいくべきかどうかの判断材料にもなります。

ここでは、犬が吐く可能性があるものを整理したいと思います。

胃液

胃から分泌される液体で、無色透明です。

犬は「食べすぎ・飲みすぎ」「食後の激しい運動」「空腹」で、胃液を吐くことがあります。

胆汁

胆汁とは肝臓から分泌される消化液で、脂肪の消化を助けます。

見た目は黄色い液体で、軽い刺激臭がします。

血液

嘔吐物が茶色や黒色の場合、血液が含まれていることが多くあります。

もし、血液が含まれているなら、何らかの病気を発症している可能性が高いと言えます。

未消化の食べ物

未消化のドッグフードやおやつを、胃液や胆汁と一緒に吐き出すことがあります。

異物

異物(おもちゃ・ゴミなど)による嘔吐では、その原因となったものを吐き出します。

吐くことが多い犬種

トイプードル

犬は吐きやすい動物だと言われています。

犬は四足歩行で、消化器官が地面と平行に並んでいます。

そのため、何かを吐き出す際、重力に逆らう必要がありません。

また、同じ犬でも、吐きやすい犬種があります。

小型犬・短頭種

小型犬・短頭種は、「短頭種気道症候群」「幽門狭窄」「熱中症」などの理由により、吐きやすいと言われています。

具体的な犬種は、つぎのとおりです。

小型犬・短頭種

  • ブルドッグ
  • チャウチャウ
  • パグ
  • トイプードル など

大型犬

一方、大型犬では「胃拡張」「胃捻転」などの病気にかかりやすく、その結果、吐きやすいと言われています。

大型犬

  • ジャーマン・シェパード
  • グレートデーン
  • ドーベルマン など

吐く原因と対策

聴診器と犬

ここでは、吐く原因と対策を見ていきます。

一過性の要因による嘔吐

一過性の要因による嘔吐には次のものがあります。

一過性の要因による嘔吐

  • 空腹
  • 食べ過ぎ(過食)
  • 食物アレルギー
  • 異物誤飲
  • フードへの適応不足
  • 薬やワクチンの副作用
  • 乗り物酔い
  • ストレス など

空腹

空腹な状態が長く続くと、黄色っぽく泡立った液体を吐くことがあります。

空腹による嘔吐は「フードの量が少ない」「1日の給与回数が少ない」場合に起こりやすくなります。

ドッグフードを食べてくれるようなら、給与量を増やすことで対応できます。

朝方に吐いてしまう場合、給与を朝・夕・寝る前の3回にすると改善する可能性があります。

ドッグフードを食べてくれない犬の場合、「あたえ方を工夫する(ふやかすなど)」「新しいドッグフードを試す」などで、しっかりと食べてもらえるようになれば改善します。

食べ過ぎ

食べすぎで気分が悪くなり、吐いてしまう場合もあります。

特に食べるのが大好きな犬は、限界を超えても食べようとしてしまいます。

愛犬にドッグフードをあたえるときは、年齢と体重から1日の給与量を調べ、それ以上はあたえないようにします。

また、おやつの分、給与量を減らすことも重要です。

1日あたりの給与量を守っているのに吐いてしまう場合は、給与回数が少なかったり、早食いをしてしまってたりするのかもしれません。

そういった場合は、給与回数・タイミングを検討したり、早食い防止の食器を使うことで食べ過ぎをおさえることができます。

食物アレルギー

食物アレルギーも嘔吐の原因となります。

黄色っぽく泡立った液体と、未消化のドッグフードを吐く場合、アレルギーを起こしている可能性があります。

アレルギーが疑われる場合は、動物病院でアレルギー検査を受けることも検討しなければなりません。

どの食物がアレルゲンか特定できれば、その食物を含んでいないドッグフードにかえることで改善が期待できます。

誤飲・誤食

異物を食べたり、飲んだりした場合、吐くことがあります。

犬は「におって」「口に入れて」ものを確認する動物です。

特に若い犬に見られますが、散歩中に「石」「鳥の糞」「土」「草」「ゴミ(タバコ・生ゴミなど)」「他の犬の糞」などを食べることがあります。

また、室内でも「おもちゃ」「ゴミ」などを食べてしまうこともあります。

この場合、拾い食いをしないように、しつける必要があります。

急なフードの切り替え

ドッグフードの切り替えは、10日程度かけて徐々に行う必要があります。

具体的には、つぎのように行います。

1日目「以前のフード90%」「新しいフード10%」
2日目「以前のフード80%」「新しいフード20%」
・・・
10日目「以前のフード0%」「新しいフード100%」

徐々にドッグフードを切り替える理由は、消化器官に負担をかけないようにするためです。

期間をかけずドッグフードを切り替えると、嘔吐や下痢の原因となります。

薬やワクチンの副反応

まれにですが、処方薬や混合ワクチン、狂犬病ワクチンの副反応で嘔吐を起こすことがあります。

1~2回程度、吐いただけで、元気そうなら特に問題はありません。

乗り物酔い

犬は、「揺れ」「におい」「恐怖」「不安」などで、乗り物酔いを起こすことがあります。

乗り物酔いが重度の場合、犬は嘔吐することがあります。

重度の症状が出る前に車をとめ休憩させてあげることで、嘔吐を防ぐことができます。

乗り物酔いがひどい場合は、動物病院で「酔い止め」を処方してもらうこともできます。

ストレス

犬は強いストレスを感じると吐いてしまうことがあります。

例えば、次のことはすべて犬にとってストレスとなってしまいます。

ストレスになるもの

  • 長時間のお留守番
  • お散歩に連れて行ってあげない
  • 大きな声でしかる
  • 無視する
  • 慣れない環境で長時間、過ごさせる
  • 急な生活環境の変化(引越しなど)
  • 苦手な動物と一緒にいさせる など

ストレスに強い犬もいれば、弱い犬もいます。

また、犬によって何がストレスになるか、どの程度のストレスになるのかわかりません。

これまでは吐かなかったのに急に吐くようになった場合、まずは病気を疑います。

病気でもないのに吐くようになった場合、ストレスが原因の可能性が高いです。

病気による嘔吐

一過性の嘔吐は、原因がわかれば改善は比較的、容易です。

ですが、病気が原因で嘔吐を起こしている場合、早期発見・早期治療をしなければ命を落とすことにもなりかねません。

そのため、「嘔吐時の様子」「嘔吐物の色や形」「嘔吐のタイミング」などを、よく観察する必要があります。

繰り返し吐いたり、吐いてもぐったりしていたりする場合は、嘔吐物をもってすぐに動物病院に行く必要もあります。

ここでは、嘔吐の原因となる病気について見ていきます。

細菌・ウイルス・寄生虫

細菌やウィルス、寄生虫が原因で、嘔吐する場合があります。

腫瘍(癌)

消化器官に腫瘍ができている場合、嘔吐や下痢を起こすことがあります。

嘔吐物が黒かったり、茶色かったりする場合は、血液が混じっていることが考えられます。

嘔吐物に血液が混じっている場合、腫瘍ができている可能性は高まります。

副腎皮質機能低下症

副腎皮質機能低下症は、「アジソン病」とも呼ばれ、副腎皮質から分泌されるホルモンが少なく病気です。

この副腎皮質機能低下症を発症すると、「嘔吐」「下痢」「食欲不振」などの症状が出ます。

胃疾患

胃の疾患により、嘔吐する場合があります。

代表的な疾患は「胃炎・胃潰瘍」「胃拡張・胃捻転」です。

胃炎・胃潰瘍

胃は本来、粘膜によって守られていますが、何らかの原因で粘膜をつくる力が弱まったり、粘膜の胃を保護する効果が弱まったりすることがあります。

胃の粘膜に異常が起こることで、炎症が起き「胃炎」を発症します。

犬の胃炎で代表的な症状が「嘔吐」です。

一方、胃潰瘍は胃酸が粘膜を傷つけ、その状態が進行することで発症します。

胃潰瘍の症状は、「嘔吐」「吐血」「血便」です。

犬の胃潰瘍が進行すると、危険な状態になり、命を落とすこともありえます。

嘔吐・血便が見られたり、ぐったりしていたりする場合、すぐに動物病院で検査を受ける必要があります。

胃拡張・胃捻転

犬の胃拡張・胃捻転は、胃が空気で膨張し、さらに、ねじれてしまう疾患です。

犬の胃拡張・胃捻転がなぜ起こるのか、詳しいことはわかっていません。

ですが、大型犬で発症しやすいと言われています。

胃拡張・胃捻転を起こすと、短時間で危険な状態になり、緊急手術が必要になります。

胃拡張・胃捻転の症状は「えずくが吐けない」「腹痛」「腹部の膨れあがり」です。

これらの症状が見られる場合は、迷わず動物病院に連れて行く必要があります。

肝疾患

犬は「肝炎」「肝臓がん」などの肝疾患にかかることで、嘔吐する場合があります。

肝炎は、主に感染・中毒によって、肝臓が炎症を起こすことで発症します。

肝炎の症状は「多尿」「多飲」「嘔吐」「下痢」「お腹の膨れ」などです。

肝炎は慢性化する恐れもあるため、早期に発見し、治療をする必要があります。

急性腎障害・慢性腎臓病

急性腎障害では、数日と短期間で腎臓の働きに異常が起こリ、慢性腎臓病は、長期間かけて徐々に腎臓の働きが低下していきます。

「急性腎障害」「慢性腎臓病」が進行すると、腎不全となります。

急性腎障害の症状は、「無尿・欠尿」「下痢」「嘔吐」「脱水」などで、重症の場合は「痙攣」「体温低下」を起こし命の危険もあります。

一方、慢性腎臓病の症状は、「多飲」「尿量の増加」「嘔吐」「貧血」などです。

まとめ

PCと犬と女性

犬は吐きやすい動物です。

ですが、犬が吐くのには何らかの理由があり、その理由を知ることはとても大切です。

例えば、空腹などで吐いている可能性がある場合は、ドッグフードの量や回数を調整することで改善が期待できます。

また、隠れた病気の発見のためにも、嘔吐物の内容や嘔吐時の状態を確認することは大切です。

日頃から確認するようにしておけば、病気の早期発見・早期治療につなげることができます。